2010年6月17日木曜日

2010/06/17 企画セミナー

今回のセミナーは、東工大の岩崎雄一さんが国環研の林岳彦さんのセミナーを聞きにつくばにいらっしゃると聞き、勉強会メンバーの永井孝志さんに企画していただいたものです。企画趣旨については、永井孝志さんのブログにも紹介されています。



企画セミナーのテーマ
「脱・基準値思考のススメ ~生態系を例に~」

永井孝志さん
(農業環境技術研究所・有機化学物質研究領域)
「趣旨説明:なぜ基準値はアテにならないのか?」

化学物質の基準値はかなり安全側に設定されています。それに対し、基準値の設定されていない天然由来の毒物を私たちは結構たくさん食べてたりします。そもそも基準値って意外と曖昧に決められていたりするもんなんです。そんな基準値に振り回されないためには、基準値が設定された背景と枠組みをきちんと把握し、どの部分が科学的に妥当でないかを明らかにし、その妥当でない部分に科学的根拠を与えることが必要でしょう。という趣旨。



永井孝志さん
「農薬の生態リスク評価:基準値を超えた場合に何が起こるのか?」

(内容の骨子は下記要旨を参照下さい。)
室内での個体レベルの急性毒性試験に回復性試験を加えることで個体群レベルでリスク評価すという取り組みのお話しでした。質疑では、影響のタイムラグをどう考えるか?とか、農薬の作用機作ごとに影響の出方が違うことが整理できればいいねとかとかがありました。

※発表資料は限定公開 ご希望の方は nougyourisk(at)gmail.com までご連絡下さい。

 

岩崎雄一さん 
(東京工業大学大学院理工学研究科)
「河川底生動物群集に及ぼす亜鉛の影響:許容可能な濃度をどう決めるか?」

(内容の骨子は下記要旨を参照下さい。)
野外調査の結果から亜鉛の影響を見いだすというアプローチのお話しでした。質疑では、生態影響は「種組成やアバンダンスの変化→種数の低下→生態機能の低下」という段階を追って出るとも考えられるので、種数の減少だけで評価するのはどうか?とかがありました。

 ↑についてのコメントが岩崎さんのブログに掲載されています。

※発表資料は限定公開 ご希望の方は yuichiwsk (at) gmail.com までご連絡ください。
岩崎雄一さんHP


こうした実験、調査による科学的根拠の積み上げって、今のところ「誰がどこまでちゃんとやるか(やれるか)」に大きく依存してしまっているのが辛いところですね。早いとこ関連分野間で連携して「何をどこまでちゃんとやるか」を共有して明示しないと、生態リスク評価はいつまでたってもだいたいだと言われかねません(水口感想)。


---発表要旨--------------------------------------
平成22年6月17日 13:30-15:00 農環研4階453会議室
テーマ「脱・基準値思考のススメ ~生態系を例に~」

趣旨説明:なぜ基準値はアテにならないのか?(永井孝志)


発表者:永井孝志 (農環研 有機化学物質研究領域)

発表タイトル:農薬の生態リスク評価:基準値を超えた場合に何が起こるのか?

要旨:農薬取締法に基づく農薬の生態リスク評価では、メダカ又はコイ,オオミジンコ,緑藻のいわゆる「3点セット」の生物種を用いた急性毒性試験結果によるLC50(半数致死濃度)もしくはEC50(半数影響濃度)を、種間の感受性差に関する不確実性係数(10 or 1)で除したものの最小値が基準値として設定される。これを超えたときに生態系では何が起こるのか。数理モデルによる予測を試みるため、藻類個体群動態モデルを開発した。除草剤プレチラクロールを対象として、増殖阻害や致死的影響、体内への取り込みや代謝などのパラメータを設定してモデルの構造を検討した。


発表者:岩崎雄一 (東京工業大学大学院理工学研究科)

発表タイトル:河川底生動物群集に及ぼす亜鉛の影響:許容可能な濃度をどう決めるか?

要旨:2003年に日本で初めて,水生生物の保全を目的とした水質環境基準が全亜鉛について設定された(淡水域は30μg/L)。しかしながら,この水質環境基準は「水生生物の個体群レベルでの存続」をその目的として掲げている一方で,実際の基準値は個体レベルの影響を評価した室内毒性試験結果から導出されている。そこで,本研究では,基準値の妥当性を検証する上での判断材料を得るために,河川底生動物群集を対象とした野外調査の結果に基づき,亜鉛濃度の影響を評価した。


☆その後、国立環境研究所の生物系若手セミナーへ参加☆
林岳彦さん 
「なぜベイズ統計はリスク評価に適しているのか?:その哲学上および実用上の理由」

たいへん勉強になりました。特に「仮説検定の考え方をリスク解析に適用するのは筋違いだ」というくだりとか。GM作物の生態リスク評価は、実は仮説検定でやられており、私(水口)はずっと「統計的有意差は生態的に意味があるの?」とつぶやいていました。折を見て、林さんにGM研究者向けにお話ししていただく機会を作りたいなと思っています。

当日のプレゼンファイルは、林岳彦さんのブログで提供されています。


☆その後、国環研セミナーと合同で「夜の部」を開催☆
19:00- 居酒屋「大漁丸」にて

十数名の参加があり、楽しい飲み会になりました♪



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