常田岳志さん
(農業環境技術研究所・大気環境研究領域)
「つくばみらいFACEにおける水田からのメタン発生研究のご紹介
~分野を超えたトレードオフ研究の必要性を交えて~」
FACE(開放系大気CO2増加)圃場における研究のお話をネタに水田からメタンが発生するメカニズムを易しく解説していただき、メタン発生緩和対策をとった場合に考え得る他のリスクとのトレードオフについて問題提起していただきました。シロアリもメタンを出しているというのと、イネのシンク能が低いと受け入れられなかった光合成産物が地下に逃げてメタンが増える話と、同位体比を使ってメタンが土由来かイネ由来かわかるという話が面白かったです。
質疑というか盛り上がったネタ(メモ的まとめ)
☆鉄が土壌にどのくらい含まれるかでメタン発生量が違う。カドミとの関連で「その鉄は何鉄?」とのツッコミ。なんだか鉄をキーにしていろいろつながっているらしい。
☆メタン発生緩和には土壌に酸素を供給できる間断灌水が有効だが、カドミの吸収抑制には土壌を還元化する中干しが有効らしい。これにも鉄がからむらしい。窒素もからみますよね?結局、後期除草剤というのはからむんでしたっけ?この水管理は、タイミングと強弱によって収量と倒伏しやすさが変わってくるので、農家さんのワザが光る部分です(←水口調べ)。そしてこの水管理のしやすさは農地整備によって良くなっていて、排水性の改善によりメタンは減っている(FACEとFOEASで手を組むらしい)。農地整備によって生物はどうなったか?
常田さんからのコメント↓
土壌を硫酸の還元によって発生するH2SとCdが反応してCdSになるとカドミは吸収されなくなります。よって、カドミ吸収抑制には、土壌を還元化したほうがよいわけです。一方、硫酸の還元がはじまる段階になると、メタンもぼちぼち発生してくるので、そこでトレードオフの問題がでてしまいます。中干しも間断灌漑同様、土壌を酸化するので、カドミにとっては吸収抑制にはなりません。
☆稲わら堆肥施用、冬期湛水、田畑転換、合鴨除草、、、いろいろありますが、農法の違いによってメタンの出方が違うだろう。メタンで出すかCO2で出すか?どっちが温室効果が低い?その他のリスク(カドミとか生物多様性とか)との兼ね合いは?
常田さんからのコメント↓
光合成によって大気から固定された炭素をCO2で大気へ戻せばニュートラルです。メタンはCO2の25倍の温室効果があるので(IPCCの4次報告書、100年換算の地球温暖化係数)、温室効果を減らすには以下にメタンでなくCO2で出すかが重要になります。
すべてはバランスによって決まるし、最適バランスは地域とかによって違うのでしょうが、その最適バランスを判断できるような仕組み、つまり「生態リスクを考慮した意思決定支援システム」を作るというのがリスク勉強会のテーマでした。今回出たネタをベースにもう少し他の分野(物質循環、栄養塩、農地工学系とか)の人にも加わっていただければ「つながり」を整理できるのではないかと思います。あと「生物多様性への影響は?」となるとトタンにあいまいな議論になるので生き物係はもっと頑張らねばなりません。常田さんの問題提起はこの勉強会のネタにぴったりで大変盛り上がりました。今後はことある毎に「つながり」ネタを提示して具体的に詰めていきたいと思います(水口感想というか決意)。
○参考情報
・常田岳志さん 農環研研究者情報
http://www.niaes.affrc.go.jp/researcher/z_tokida_t.html
・農業と環境 No.114 メタン:水田から出る温室効果ガス
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/114/mgzn11412.html
・シロアリの力借り物質循環の謎を解く
http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/04kudou/