大東健太郎さん
(農業環境技術研究所・生態系計測研究領域)
「文献紹介+α」
○文献紹介
John Porter et al. 2009 (Ambio 38, 186-193) The value of producing food, energy, and ecosystem services within an agro-ecosystem
○+αの配布資料(PDFへのリンクです。)
1.生態系と生物多様性の経済学
農業生態系サービスの貨幣価値化にTop-down式とBottom-up式があり、この文献 では、Costanza et al. 1997(Nature 387,253-260)にもとづくTop-down式の結果 (Table 2)と著者らが圃場試験を実施して取ったデータにもとづいて試算した Bottom-up式の結果を紹介している。 著者らは試験圃場にて、CFE(Combine food and energy)と称する農業体系(作物栽培+牧草栽培+圃場端に木を植えて燃料 生産)を実施し、いろいろデータを取って、パラメーター毎にお値段を決め、農 業生態系サービスを貨幣価値化した(Table 3)。さらに6つのシナリオを想定し、 EU規模で生態系サービスの貨幣価値を試算した(Table 4)。その結果、CFE体系 は、エネルギー投資に対する生態系サービスの産出効率が高い優れた農業体系で あり、現在EUが推進している政策は間違っていないことがわかった。という論文 でした。
この論文は、データの取り方が甘い点、パラメータのお値段設定がウ ソっぽい点などの欠点があるものの、エネルギー投資に対する生態系サービスの 産出効率を提示したというアイデアが良いというお話でした。
+αとして、生態系サービスを経済的に評価する為の2つの枠組みをご紹介いた だきました(上記配布資料)。
1の詳細は、西田智子さんによる以下の報告をご参照下さい↓
2は、企業活動が生態系へ与える影響と受ける影響のグルグルを考えて経営リス ク管理をしようという試み。
永井孝志さん曰わく、ISO31000の経営リスクを最小 化するように全体の経営を最適化させるという考えと似ているとのことでした。
議論では、
☆このBottom-up式を日本でやれないか?
例えば畦畔の価値は、病害虫、水の涵養 能、生物多様性確保、美観など・・・、国スケールなら掛ける面積か?GIS情報 では畦畔は線で示されているが、面積換算する取り組みがある。
☆新たな生態系サービスを評価する場合、最初はコストがかかるものの、需要が このくらいになれば儲かるようになるといった評価が必要。
☆2の取り組みが普及したとして、同業者にタダ乗りする連中を取り締まる方策は あるか?
☆日本に安く輸出するために破壊されている途上国の資源に対し、破壊しないこ とにお金を払えば、生産量は落ちて国際価格は上がるので、関税をかけずとも国 産品を保護できるのでは?(rentseeking)
☆↑木材ならできそうだけど、農産物は難しいかも。
☆生物多様性の価値は、医薬品開発のための遺伝資源と一般に言われるが、本来 は、それが破壊されることで生物の進化が妨げられることにある。
☆生物多様性の価値を↑の視点から測るのは難しい。私たち研究者がやれるのは、 現在お金がつぎ込まれている政策による生物多様性への影響について科学的根拠 を示していくことではないか?
といったものがありました。
私たちの研究では、現状の政策が悪くないと言うために文脈依存的な結果だけを だすようなことがあってはならないが、政策提言のために粗々でも、それを認め た上で、国スケールの試算をするのはアリなのかなと思いました(感想)。
私たちの周辺にはそのためのデータは山積しているように感じます。アレが足りない コレはできないとウダウダ言うだけじゃなく、そろそろ経済学者と相談して何か 試算したいですね。
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